就活戦線、異常あり。
「内定、ゼロ。」
四年制大学、経済学部、地方出身。エントリーシートは30社。面接まで進んだのは3社。最終面接での結果通知──すべて「ご縁がなかった」という定型文だった。
俺、タカシ(仮名)。22歳。就活真っ只中。
──というか、終わりかけていた。
春先、就活スーツが擦り切れるほど動いた。ノートには模擬面接のメモがびっしり。けれど、6月。世の中はすでに「内定式」ムード。
俺のスケジュール帳は、7月以降、真っ白だった。
「どうしたら受かるんだよ…」
「何がいけなかったんだ?」
「もう、いいや……」
何もかもがわからなくなった。やる気も、気力も、希望も、ない。
“普通”の履歴書が破り捨てられた日
リクナビもマイナビも使い果たした。合同説明会では、どこも似たようなことを言う。
「挑戦できる環境です」「アットホームな雰囲気です」
何十枚と書いた履歴書は、もはや「テンプレの塊」だった。
ふと、自分の履歴書を見直したとき──思った。
「これ、誰が読んでも同じに見えるな」
そこで俺は、破った。自分の履歴書を、全部。
だが、それは“絶望”でありながら、同時に“転機”だった。
面接の地獄めぐり
そんなとき、X(旧Twitter)で偶然流れてきた投稿が目に入った。
「内定ゼロで泣いてる?だったら、私を呼びなよ。──リコ」
怪しい。でも、救いのようでもあった。俺は半ばヤケでDMを送った。
翌日。新宿のカフェ。そこに現れたのは黒髪ロングの小柄な女性──リコ。
「アンタ、タカシ?」
「え、あ、はい…」
「じゃあ、今から“面接の練習”を始めるわよ」

矢継ぎ早の質問が飛んでくる。
「長所は?」「短所は?」「志望動機は?」「昨日何食べた?」
普通の面接では聞かれない内容ばかりだった。
「ねぇ、面接ってさ、“答え”があると思ってない?」
「違うの。“印象操作”なのよ。面接官が“どう感じるか”がすべて」
リコ流・就活再起動トレーニング
リコの指導は徹底的だった。
①第一印象の作り方
- 姿勢:背筋を伸ばし、歩幅は小さめで一定に
- 目線:正面固定。下を見た瞬間に“自信がない”と判断される
- 表情:口角を2ミリ上げるだけで「印象点」が上がる

②答え方のフレームワーク
- 結論 → 理由 → 数字や具体例 → 再度結論
例:「私は協調性があります」ではなく、
「私は協調性があります。実際、大学のゼミで20人をまとめ、発表準備を1週間前倒しで終えました」
③企業研究の切り口
リコは毎晩Zoomでこう言った。
「その会社の“強み”を見抜け。ホームページにある言葉じゃダメ。競合比較して、“ここにしかない価値”を見つけろ」
突破の瞬間
訓練から3週間後。中堅IT企業の最終面接。
「あなたは、なぜうちを志望したんですか?」
リコに何百回も叩き込まれた質問だ。
俺は答えた。
「事業内容ではなく、“社員の平均勤続年数”に惹かれました。ここなら安心して長く働けると感じたからです」

社長の眉が動いた。
──そして一週間後。
「内定、おめでとうございます」
涙が止まらなかった。
就活の“その先”
リコは最後にこう言った。
「内定はゴールじゃない。“中身”がなきゃすぐ潰れる。就活で学んだ“魅せ方”を、今度は“実力”で裏付けるのよ」
実際、入社後は地獄だった。メール一通に30分。敬語で詰まる。毎日叱られた。
でも、あのリコの目が頭に浮かんだ。
「見せかけじゃダメ。本物になれ」
その言葉を胸に、俺は最初の契約をつかんだ。
そしてリコ先生の顔には微笑みが戻った。

終章:読者への伝言
就活が辛い?
内定が出ない?
それは、珍しくも特別でもない。
大切なのは「方法を変える勇気」だ。
✔ 履歴書を“誰でも同じ”から“自分の物語”に変える
✔ 面接を“正解探し”から“印象操作”に変える
✔ 自分を“凡人”と思う思考から、“武器を持つ人間”に変える
リコは言う。
「受からないのは“能力”じゃない。“見せ方”と“戦略”が足りないだけ」
明日から、就活が“再起動”することを願って──。
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